登録後に行う第1種動物取扱業者の責務

第1種動物取扱業の登録をして、事業を開始した後、動物愛護管理法上の守っていかなければいけない様々なことがあります。

 

ここでは、動物愛護管理法における、第1種動物取扱業者全般の責務と、第1種動物取扱業者のうち犬猫販売業者に特有の責務ついてご案内します。

 

第1種動物取扱業者の責務のイメージ図
第1種動物取扱業者の責務のイメージ図

1.第1種動物取扱業者全般の責務

1-1.変更前の届出

次の場合には、あらかじめ届出をする必要があります。

  1. 営んでいる業種とその内容・実施方法を変更しようとする場合
  2. 犬猫販売業が、犬猫の繁殖を行うかどうかを変更しようとする場合
  3. 新たに飼養施設を設置しようとする場合
  4. 新たに犬猫販売業を営もうとする場合

  ※上記1と2は、第1種動物取扱業の登録の申請内容の一部です。

1-2.変更後の届出

次の場合は、変更してから30日以内に届出をする必要があります。

  1. 軽微な変更
  2. 上記1-1「変更前の届出」の1と2以外の、登録の申請内容の変更

上記の、軽微な変更とは、以下の変更のことです。

  • 飼養施設・設備の規模増大により、増大する床面積が、施設の延べ床面積の30%未満であること
  • 照明設備、遮光設備や風雨を遮るための設備の増設や配置の変更
  • 飼養施設の設備等※の変更で、現在ものと同等以上の機能を有するものへの改設
  • 飼養施設の管理方法の変更
  • 営業時間の変更で、変更する営業時間が夜間(午後8時から午前8時)に含まれないもの

※「飼養施設の設備等」とは、ケージなど、照明設備、給水設備、排水設備、洗浄設備、消毒設備、汚物・食べ残しなどの廃棄物の集積設備、動物の死体の一時保管場所、エサの保管設備、清掃設備、空調設備、遮光設備や風雨を遮るための設備、訓練場のことをいいます。これらを記載した平面図を申請時には提出しています。

1-3.廃業の届出

次の場合には、30日以内に届出をする必要があります。

  1. 死亡 (届出人:相続人)
  2. 法人が合併によって消滅 (届出人:法人を代表していた者)
  3. 法人が破産手続きで解散 (届出人:破産管財人)
  4. 法人がその他の理由で解散 (届出人:清算人)
  5. 第1種動物取扱業を廃止 (届出人:第1種動物取扱業者であった個人または法人の代表者)

1-4.標識の掲示

事業所ごとに、標識を顧客の出入口から見やすい場所に掲示する必要があります。

 

事業所以外で営業をする場合には、識別章を、顧客と接するすべての職員の胸部など、顧客から見やすい位置に掲示する必要があります。

1-5.基準の遵守

動物の健康・安全の保持とともに、生活環境に支障が生じることを防止するため、取扱う動物の管理方法について、基準省令(正式名称:第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令)を遵守しなければいけません。

1-6.動物取扱責任者

事業所ごとに、1名以上の専属・常勤の動物取扱責任者を配置する必要があります。

 

そして、動物取扱責任者に対して、自治体が開催する研修会を受講させる必要があります。

1-7.販売時の情報提供

動物(哺乳類、鳥類、爬虫類)を販売する場合、あらかじめ一般消費者などの顧客(顧客に第1種動物取扱業者は含みません)に対して、事業所において動物の現在の状況を直接見せる必要があります。

(よって、インターネット上だけで販売することはできません。)

 

また、対面で書面などを用いて、当該動物の飼養・保管の方法などに必要な以下の18項目の情報を提供しなければいけません。

  1. 品種
  2. 性成熟時の標準体重・標準体長、その他の大きさに関する情報
  3. 平均寿命、その他の飼養期間の情報
  4. 飼養・保管に適した飼養施設の構造・規模
  5. 適切な給餌・給水の方法
  6. 適切な運動・休養の方法
  7. 人と動物の共通感染症、当該動物がかかりやすい疾病の種類と予防方法
  8. 不妊・去勢の方法と費用(哺乳類に限る)
  9. その他のみだりな繁殖を制限するための措置(不可逆的に不妊・去勢を実施している場合を除く)
  10. 遺棄の禁止、その他の当該動物についての関係法令の規制内容
  11. 性別の判定結果
  12. 生年月日(輸入して生年月日がわからないときは、推定される生年月日と輸入年月日)
  13. 不妊・去勢の実施状況(哺乳類に限る)
  14. 繁殖を行った者の氏名または名称・登録番号または所在地
    • 輸入された動物で繁殖を行った者が分からないときは、輸入した者の氏名または名称・所在地
    • 譲り受けた動物で繁殖を行った者が分からないときは、譲渡した者の氏名または名称・所在地
  15. 所有者の氏名(みずからが所有しない動物を販売するときに限る)
  16. 当該動物の病歴、ワクチン接種状況など
  17. 当該動物の親・同腹子の遺伝性疾患の発生状況(哺乳類に限り、関係者からの聴き取りによって、知ることが困難なものを除く)
  18. その他の当該動物の適正な飼養・保管に必要な事項

これらの情報を、顧客が提供を受けたことを確認するため、相手に署名などをしてもらいます。(基準省令による)

1-8.帳簿等の備付

以下の表のとおり、上段にある業種が、◎が書かれてある台帳・帳簿(すべて5年間保存)を備えなければいけません。

台帳・帳簿の種類 販売業(飼養施設あり) 販売業(飼養施設なし) 保管業(飼養施設あり) 保管業(飼養施設なし) 貸出業 訓練業(飼養施設あり) 訓練業(飼養施設なし) 展示業 競りあっせん業 譲受飼養業
飼養施設・動物の点検状況記録台帳  ◎      
繁殖実施状況記録台帳 ◎※1       ◎※1     ◎※1    
動物取引記録台帳※2  ◎
取扱う動物の帳簿※3          

※1 繁殖を実施する場合のみ、台帳を備える必要があります。

 

※2 「取扱う動物の帳簿」を個体ごとに作成している場合は、動物取引記録台帳を備えなくても良いです。

 

※3 「取扱う動物の帳簿」は、以下の事項を記載しなくてはいけません。(犬猫の場合は個体ごとに、それ以外の場合は動物の品種ごとに記載します。)

  1. 当該動物の品種
  2. 当該動物の繁殖者の氏名または名称、登録番号または所在地
    • 輸入された動物で繁殖を行った者が分からないときは、輸入した者の氏名または名称・所在地
    • 譲受けた動物で繁殖を行った者が分からないときは、譲渡した者の氏名または名称・所在地
    • 捕獲した動物では、捕獲した者の氏名または名称、登録番号または所在地、捕獲した場所
  3. 当該動物の生年月日(輸入して生年月日がわからないときは、推定される生年月日と輸入年月日)
  4. 当該動物を所有するなどした日
  5. 当該動物を購入または譲受けたとき、販売または譲渡した者の氏名または名称、登録番号または所在地
  6. 当該動物を販売または引き渡した日
  7. 当該動物を販売または引き渡した相手の氏名または名称、登録番号または所在地
  8. 当該動物を販売または引き渡した相手が関係法令に違反していないことの確認状況
  9. 販売業者のとき、当該動物の販売を行った者の氏名
  10. 販売業者のとき、販売時の情報提供と顧客が情報提供を受けたことの署名の確認の実施状況
  11. 貸出業者のとき、貸出先への情報提供の実施状況と当該動物の貸出しの目的と期間
  12. 当該動物が死亡した日(動物販売業者等が飼養・保管している間に死亡した場合に限る)
  13. 当該動物の死亡原因

※取扱う動物の帳簿の記載事項の裏付け資料(取引伝票など)も、整理・保存するように努めなければいけません。

1-9.都道府県等への報告

動物取扱業者(販売、貸出し、展示、譲受飼養をする業者)は、毎年4月1日から翌年3月31日までの期間中における次の事項を、5月30日までに都道府県知事に届出をする必要があります。

※初めて登録したときは、その日から3月31日までの期間について、5月30日に届出をします。

  1. 期間のはじめに所有などしていた動物の種類ごとの数
  2. 期間中に新たに所有などした動物の種類ごとの数(各月ごとの合計数)
  3. 期間中に販売、引き渡し、死亡した動物のそれぞれの区分ごと、種類ごとの数(各月ごとの合計数)
  4. 期間の終了した日に所有などしていた動物の種類ごとの数

2.犬猫販売業者に特有の責務

犬猫販売業者は、上記の「1.第1種動物取扱業者の責務」以外にも、特有の、守らなければいけないことがあります。

 

ここでは、犬猫販売業者に特有の責務についてご案内します。

2-1.犬猫等健康安全計画の遵守

犬猫等健康安全計画は、第1種動物取扱業の登録の申請時に提出するものです。

 

犬猫等健康安全計画を守っていないと、都道府県知事などが報告を求めたり、立ち入り検査することがあります。

2-2.獣医師との連携の確保

取扱う犬猫の健康に問題が生じた場合、すぐに獣医師の診察を受けられるようにすることで、犬猫の健康・安全を確保するために獣医師との連携が必要です。

 

獣医師との連携状況は、犬猫等健康安全計画にも記載すべき項目となっています。

2-3.販売困難な犬猫の終生飼養の確保

販売ができなくなった犬猫についても終生飼養(命の最後まで、適切に飼養・保管すること)をしなければいけません。

 

ただし、犬猫販売業者が引き続き飼養することが求められているのではなく、動物愛護団体などと連携・協力して、譲渡先を見つけることでも問題ありません。

2-4.幼齢(56日齢以下)の販売制限

販売のために繁殖を行っている犬猫販売業者は、生まれてから56日を経過していない犬猫を引き渡し・展示することはできません。

2-5.犬猫の検案

犬猫販売業者が所有する犬猫が死亡した場合、必要があるときは、都道府県知事などから、一定期間内に獣医師による検案を受けて、検案書や死亡診断書の提出を命令されることがあります。

4.まとめ

動物愛護管理法上の、第1種動物取扱業者全般の責務と、犬猫販売業者に特有の責務をご案内しました。
 

これらの責務のうち、動物管理方法については基準省令に記載されている事項を守っていく必要があります。

 

基準省令には、第1種動物取扱業者のすべての業種が守っていく共通事項と、事業内容に応じて当てはまることを守っていく個別事項がありますので、それぞれ確認して守っていきましょう。

リンク(【共通事項】基準省令~第1種動物取扱業者の動物管理方法)

リンク(【個別事項】基準省令~第1種動物取扱業者の動物管理方法)