第1種動物取扱業の登録をして、事業をはじめた後、第1種動物取扱業者には守っていくべき責務があります。
第1種動物取扱業者の責務の1つに、「基準省令」に記載されている動物管理方法を遵守する、というものがあります。
この動物管理方法(基準省令)には、すべての業種に当てはまる共通事項と、事業内容に応じて当てはまる個別事項があります。
また、共通事項と個別事項のそれぞれには、特定の種類の動物にだけ当てはまる項目もあります。
取扱う動物によって、守らなければならない事項を下表にまとめました。
取扱う動物の種類
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共通事項(動物全般)
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共通事項(犬猫)
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共通事項(特定動物・有毒動物)※1
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個別事項(動物全般)
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個別事項(犬猫)
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犬猫
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○
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○
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※2
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※2
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特定動物・有毒動物
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○
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○
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※2
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犬猫・特定動物・有毒動物以外の動物
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○
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※2
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※1 特定動物とは、人の生命・身体・財産に害を加えるおそれがある動物のことです。
※2 事業内容に応じて、該当する事項を守っていくことになります。
ここでは、第1種動物取扱業者が守らなければいけない動物管理方法のうち、共通事項について、動物全般に当てはまる項目と犬猫のみに当てはまる項目、特定動物・有毒動物のみに当てはまる項目に、分けてご案内します。
動物の管理方法について、第1種動物取扱業者のすべての業種に当てはまる項目を共通事項としてご案内します。
- 飼養施設は、定期的に清掃・消毒を行い、汚物や食べ残しなどを適切に処理して、清潔に保つ
- 飼養施設は、1日1回以上巡回を行い、保守点検を行う
- 飼養施設の清掃・消毒・保守点検の実施状況を台帳(飼養施設・動物の点検状況記録台帳)に記録し、5年間保管する
- 動物の鳴き声・臭気・動物の毛などにより、周辺の生活環境を著しく損なわないように、飼養施設の開口部を適切に管理する
- 飼養施設について、鳴き声が外部にいきにくくなるような対策をする
- 動物の脱走を防止するため、施設管理に必要な対策をし、必要に応じて施錠設備を備える
- 臭気の拡散や動物の毛などの飛散により、飼養施設内の環境や周辺の生活環境を著しく損なう事態が発生するおそれがある場合、空気清浄機、脱臭装置、汚物用の密閉容器などを備える
- ねずみ・はえ・蚊・のみなどの衛生動物が侵入するおそれがある場合、その侵入の防止や駆除を行うための設備を備える
- ケージなどの構造・規模は、個々の動物が自然な姿勢で立ち上がる、横たわる、羽ばたくなどの日常的な動作を容易に行うための十分な広さ・空間があるようにする。飼養期間が長期間にわたるときは、必要に応じて、走る・登る・泳ぐ・飛ぶなどの運動ができるように、より一層の広さ・空間があるようにする(ただし、傷病動物の飼育・保管をするときや、一時的に保管する等の特別な事情がある場合を除く)
- ケージなどや訓練場は、突起物・穴・くぼみ・斜面などによって、動物がけがなどをしないような安全な構造・材質にする
- ケージなどや訓練場の床・内壁・天井・付属設備は、清掃が容易であるなど衛生状態の維持・管理がしやすい構造・材質にする
- ケージなどや訓練場は、動物の種類・習性・運動能力・数などに応じて、動物の脱走を防止できる構造・強度にする
- ケージなどに、給餌・給水のための器具を備える
- ケージなどに、動物の生態・習性・飼養期間に応じて、遊具・止まり木・砂場・水浴びや休息ができる設備を備える
- ケージなどの清掃を1日1回以上行い、汚物・食べ残しなどを適切に処理する
- ケージなどには、ふん尿の受け皿を置いたり、床敷きを敷くなどの対策をする
- 動物の脱走を防止するため、ケージなどや訓練場に、必要に応じて、施錠設備を備える
※第1種動物取扱業者は、5年ごとに登録の更新が必要であるため、登録時の飼養施設・設備の基準に適合し続けておく必要もあります。
第1種動物取扱業の登録時の基準はこちらをご覧ください。⇒リンク(第1種動物取扱業者に登録するための5つの基準)
※「ケージなど」とは、ケージだけではなく、平飼いの設備や運動スペースの外周を囲む柵なども含んでいます。部屋などで放し飼いをしている場合は、その部屋全体が、「ケージなど」に該当します。
飼養・保管をする動物の種類・数は、飼養施設の構造・規模、動物の飼養・保管に当たる職員の数に見合ったものとします。
- 動物を仕入れたり、販売するときなど、あらかじめ取引の相手が、動物の取引に関する法令に違反していないこと、違反するおそれがないことを聴き取る。違反が確認された場合は、取引を行わない
- ケージなどの外で飼養・保管をしない (ただし、管理を徹底した上で、一時的な場合は除く)
- ケージなどに入れる動物の種類・数は、ケージなどの構造・規模などに見合ったものにする
- 異種または複数の動物の飼養・保管をする場合は、ケージなどの構造・配置、または同一のケージなどに入れる動物の組み合わせを考慮して、過度な動物間のケンカなどを避けるようにする
- 動物の種類・数・発育状況・健康状態・飼養環境に応じて、エサの適切な種類・量・回数を選択し、給餌・給水をする
- 走る・登る・泳ぐ・飛ぶなどの運動が困難なケージなどにおいて飼養・保管をする場合、動物のストレスを軽減するために、必要に応じて運動の時間を設ける
- 1日1回以上巡回を行い、動物の数・状態を確認するとともに、その実施状況を台帳(飼養施設・動物の点検状況記録台帳)に記録し、5年間保管する
- 動物の脱走に備え、必要に応じて捕獲体制の整備、個体識別の実施などの対策をする
- 野生動物については、生理・生態・習性を踏まえて、飼養可能性を検討する。必要に応じて、訓化措置をする
- 顧客など(場所の提供者やその他関係者を含む)に動物とふれあわせるときは、動物に過度なストレスがかかって、顧客などに危害を与えたり、または動物や顧客などが人と動物の共通感染症にかかったりすることのないように、顧客などに対して動物とのふれあい方法について指導するとともに、動物に適度な休息を与える
- 顧客など(場所の提供者やその他関係者を含む)に動物とふれあわせるときは、動物の健康を保持するため、顧客などが動物にみだりに食物を与えることのないように必要な対策をとる※
- 第1種動物取扱業の廃止などにより、飼養・保管を継続することが困難な動物がでた場合は、動物が命あるものであることから、譲り渡しなどによって生存ができるように努める
- 病気の回復の見込みがない場合など、やむを得ず動物を殺処分しなければならない場合は、できるかぎり苦痛を与えない方法にする
- 災害時における動物の健康・安全の確保、人の生命・身体・財産に対する侵害の防止をするため、平時より、職員間の連絡体制や動物の脱走時の捕獲体制の整備、動物の避難方法の確立、エサの備蓄などの対策をする
- 広告は次の方法により行う
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- 氏名または名称、事務所の名称・所在地、業種の種別、登録番号と登録年月日、登録の有効期間の末日、動物取扱責任者の氏名 を掲載
- 安易な飼養・保管の助長をしないように、事実に反した飼養・保管のしやすさ、幼齢時の愛らしさ、生態・習性に反した行動などを過度に強調することなどによって、顧客などに動物の誤った理解を与えないような内容にする
- 都道府県知事が実施する動物取扱責任者研修の知識を、他のすべての職員に伝達し習得させるための対策をする
※動物に食物を与えてよいときは、認められた食物以外のものが与えられないようにします。
動物の管理方法について、第1種動物取扱業者のすべての業種に当てはまる共通事項のうち、犬猫のみに当てはまる項目をご案内します。
犬猫の飼育施設は、運動スペース分離型(以下、分離型と言います。)と運動スペース一体型(以下、一体型と言います。)があります。
これらの飼養施設には基準がありますが、基準の詳しいことはこちらをご覧ください。⇒リンク(犬猫のみに関する飼養施設・設備と従事者の数のルール)
飼養施設において、飼養・保管に従事する職員1人当たりの頭数の上限は、犬については20頭(うち繁殖犬は15頭)、猫については30頭(うち繁殖猫は25頭)とする。
この規定の詳しいことは、こちらをご覧ください。⇒リンク(犬猫のみに関する飼養施設・設備と従事者の数のルール)
- 飼養施設に温度計と湿度計を設置して、低温・高温によって犬猫の健康に支障がないようにする
- 臭気によって飼養環境・周辺の生活環境を損なわないように、飼養施設を清潔に保つ
- 自然採光や照明によって、日長変化(昼夜の長さの季節変化)に応じて、光環境を管理する※
※日没後に営業する場合は、その分早朝から明るくならないようにするなどして、昼夜の長さに着目した管理をしなければいけません。
猫の場合、日が長くなると発情するため、照明などで明るい時間を長くして、人為的に出産回数を増やすことはいけません。
生理的には年3回の繁殖が可能ですが、日が短くなると発情しなくなること、妊娠期間と授乳期間があること、販売される子猫の規制を考慮すると、繁殖と子育てに成功した場合は年3回のサイクルでの繁殖は難しいです。
そのため、年2回を超える繁殖がふつうにみられるときは、この基準に違反しているとみなされる場合があります。
- 犬猫を次のうち、どれにも当てはまらないようにする
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- 被毛にふん尿などが固着した状態
- 体表が毛玉で覆われた状態
- 爪が異常に伸びている状態
- 上記の他、適切な飼養・保管が行われていないことにより、健康・安全が損なわれるおそれのある状態
- 幼齢の犬猫は、適切な期間、親・兄弟姉妹などと一緒に飼養・保管する
- 清潔な水が常に飲めるようにしておく (ただし、傷病動物の飼育・保管をするときや、一時的に保管する等の特別な事情がある場合を除く)
- 分離型のケージの場合、1日3時間以上運動スペース内で自由に運動することができる状態にする※1 (ただし、傷病動物の飼育・保管をするときや、一時的に保管する等の特別な事情がある場合を除く)
- 散歩やおもちゃを用いた活動などを通して、人と毎日ふれあえるようにする (ただし、傷病動物の飼育・保管をするときや、一時的に保管する等の特別な事情がある場合を除く)
- 夜間に営業を行う場合、当該時間内に顧客・見物客などが飼養施設内に立ち入ることなどによって、犬猫の休息を妨げられることがないようにする (ただし、特定成猫(※2)については、夜間のうち展示を行わないときに、顧客・見物客などが飼養施設内に立ち入ることなどにより、休息が妨げられないようにする)
※1 連続して3時間以上運動させておく必要はなく、1回1時間の運動を1日3回させることでも問題ないです。
また、外部の公園や散歩での運動時間を、ここでの運動時間に含めることはできません。
※2 生後1年以上で、午後8時から午後10時までの間に展示されるときには休息設備に自由に移動できる状態で展示されている猫のことです。
動物の管理方法について、第1種動物取扱業者のすべての業種で当てはまる共通事項のうち、特定動物や有毒動物のみに当てはまる項目をご案内します。
- 特定動物の取引については、あらかじめ相手に、特定動物の飼養・保管の許可証があることを確認する。許可を得ていないことが確認されたときは、取引を行わない
- 毒へびなどの有毒動物の飼養・保管をする場合、抗毒素血清などの救急医薬品を準備、または医師による迅速な救急処置が行える体制を整備する
基準省令に記載されている、第1種動物取扱業者のすべての業種に当てはまる動物の管理方法(共通事項)について、動物全般に当てはまる項目、犬猫だけに当てはまる項目、特定動物・有毒動物だけに当てはまる項目を、それぞれご案内しました。
共通事項だけではなく、個別事項(事業内容に応じて当てはまる動物の管理方法)も守っていくことが、第1種動物取扱業者の責務となっていますので、個別事項も確認していきましょう。