第1種動物取扱業の登録をした後、事業をしていく上では、第1種動物取扱業者の責務があります。
第1種動物取扱業者の責務の1つが、基準省令に記載されている動物の管理方法を遵守していくことです。
この基準省令には、すべての業種に当てはまる共通事項と事業内容に応じて当てはまる個別事項があり、それぞれ、動物全般に該当する項目と、犬猫のみに該当する項目があります。
ここでは、個別事項について、動物全般に当てはまる項目と犬猫のみに当てはまる項目を、分けてご案内します。
また、個別事項の1つである、マイクロチップの情報登録についても詳しくご案内します。
第1種動物取扱業者の事業内容に応じた、動物全般の管理方法(個別事項)についてご案内します。
- 顧客と売買契約をするにあたって、その動物を飼養・保管していた間に病気などの治療、ワクチン接種などを行っていたら、獣医師が発行した、それらについての証明書を顧客に交付する※1
- 離乳などを終えて、成体が食べるエサと同様のエサを自力で食べることができるようになった動物(哺乳類に限る)を販売する
- 飼育環境の変化や、輸送に対する十分な耐性が備わった動物を販売する
- 2日以上目視で状態(下痢・おう吐・四肢のまひなどの外形上明らかなものに限る)を観察し、健康上の問題がなかった動物を販売する
- 第1種動物取扱業者に販売するときは、契約にあたって、あらかじめ次の情報を書面などにして、相手に交付して説明する※2。そして、相手が書面などを受領したことの確認のために、署名などをしてもらう
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- 品種などの名称
- 性成熟時の標準体重・標準体長、その他の体の大きさに関する情報
- 平均寿命、その他の飼養期間に関する情報
- 飼養・保管に適した飼養施設の構造・規模
- 適切な給餌・給水の方法
- 適切な運動・休養の方法
- 人と動物の共通感染症、その他の当該動物がかかりやすい疾病の種類と予防方法
- 不妊・去勢の方法と費用(哺乳類に限る)
- その他のみだりな繁殖を制限するための措置(不可逆的に不妊・去勢を実施している場合を除く)
- 遺棄の禁止、その他の当該動物に関する関係法令の規制内容
- 性別の判定結果
- 生年月日(輸入して生年月日がわからないときは、推定される生年月日と輸入年月日)
- 不妊・去勢の実施状況(哺乳類に限る)
- 繁殖を行った者の氏名または名称・登録番号または所在地
- 輸入された動物で繁殖を行った者がわからないときは、輸入した者の氏名または名称・所在地
- 譲り受けた動物で繁殖を行った者がわからないときは、譲渡した者の氏名または名称・所在地
- 所有者の氏名(みずからが所有しない動物を販売するときに限る)
- 当該動物の病歴、ワクチン接種状況など
- 当該動物の親・同腹子の遺伝性疾患の発生状況(哺乳類に限る。関係者からの聴き取りによって、知ることが困難なものを除く)
- その他の当該動物の適正な飼養・保管に必要な事項
- 一般消費者など(第1種動物取扱業者を除く)の顧客に対して、販売時の情報提供をした際は、顧客が情報提供を受けたことの確認のために、署名などをしてもらう
- 販売するすべての動物を顧客が目視により、または写真などで確認できるようにする
- 動物ごとに次の情報を顧客から見やすい位置に文書などで表示する
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- 品種などの名称
- 性成熟時の標準体重・標準体長、その他の体の大きさに関する情報
- 性別の判定結果
- 生年月日(輸入して生年月日がわからないときは、推定される生年月日と輸入年月日)
- 生産地など
- 所有者の氏名(みずからが所有しない動物を販売するときに限る)
- 動物の仕入れ・販売・競りなどの動物の取引状況について台帳(動物取引記録台帳)に記録し、5年間保管する※3
※1 当該動物を仕入先から受け取ったときに、治療やワクチン接種などについての証明書があるときは、それらも併せて交付します。
※2 2~10までの情報は、必要に応じて説明すればいいです。
※3 「取扱う動物の帳簿」を動物の個体ごとに作成している場合は、動物取引記録台帳を備えなくてもいいです。
- 動物をケージなどから搬出するたびに、そのケージなどの清掃・消毒をする
- 動物間における感染症のまん延やケンカを防止するため、親・子・同腹子などとともに飼養・保管することが妥当だとされる場合を除いて、顧客の動物は個々に収容する
- 動物に芸をさせたり、訓練をする場合、芸や訓練などが過酷なものとならないようにする※
- 動物の取引状況について台帳(動物取引記録台帳)に記録し、5年間保管する
※訓練業者のみに当てはまる規定です。
- 飼育環境の変化や、輸送に対する十分な耐性が備わった動物を貸出す
- 2日以上目視で状態(下痢・おう吐・四肢のまひなどの外形上明らかなものに限る)を観察し、健康上の問題がなかった動物を貸出す
- 契約にあたって、あらかじめ、次の情報を貸出先に提供する
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- 品種などの名称
- 飼養・保管に適した飼養施設の構造・規模
- 適切な給餌・給水の方法
- 適切な運動・休養の方法
- 人と動物の共通感染症、その他の当該動物がかかりやすい疾病の種類と予防方法
- 遺棄の禁止、その他の当該動物に関する関係法令の規制内容
- 性別の判定結果
- 不妊・去勢の実施状況(哺乳類に限る)
- 当該動物のワクチン接種状況
- その他の当該動物の適正な飼養・保管に必要な事項
- 貸出した動物が撮影に使用される場合は、動物本来の生態・習性に関して一般人に誤解を与えるおそれのある撮影が行われないようにする
- 貸出先で、動物に過度の苦痛を与えないように、利用時間・環境が適切に配慮されるようにする
- 動物の仕入れ・貸出しなどの動物の取引状況について台帳(動物取引記録台帳)に記録し、5年間保管する※
※「取扱う動物の帳簿」を動物の個体ごとに作成している場合は、動物取引記録台帳を備えなくてもいいです。
- 夜間に展示を行う場合は、明るさの抑制などの飼養環境に配慮する※1
- 長時間連続して展示を行う場合、動物のストレスを軽減するため、必要に応じて、途中に展示を行わない時間を設ける
- 動物に芸をさせたり、訓練をする場合、芸や訓練などが過酷なものとならないようにする
- 動物の取引状況について台帳(動物取引記録台帳)に記録し、5年間保管する※
※「取扱う動物の帳簿」を動物の個体ごとに作成している場合は、動物取引記録台帳を備えなくてもいいです。
- 競りの実施にあたって、動物を一時的に保管する場合、動物が健康であることを目視、またはその動物を譲受けた相手方からの聴き取りによって確認し、当分の間、必要に応じて、他の動物と接触させないようにする
- 競りによって売買が行われる際、販売業者が契約時の説明をしていることを確認する※
- 一時的に保管するとき、動物間における感染症のまん延やケンカを防止するため、親・子・同腹子などとともに飼養・保管することが妥当だとされる場合を除いて、顧客の動物は個々に収容する
- 動物の取引状況について台帳(動物取引記録台帳)に記録し、5年間保管する
- 競りに参加する事業者に聴き取りをして、事業者が第1種動物取扱業の登録を受けていることや、動物の取引に関する関係法令に違反していないこと、違反するおそれがないことを確認する。違反が確認された場合は、競りに参加させないようにする
※本ページ「1-1.販売を行う場合」の上から5つ目の黒丸の説明のことです。
- 輸送設備(輸送中に動物を入れておく設備)は、確実に固定するなどして、衝撃による転倒を防止する
- 輸送中は、常時、動物の状態を目視(監視カメラを利用した方法を含む)により確認できるようにし、必要な設備を備え、または必要な体制を確保する (ただし、航空輸送は除く)
- 輸送する動物の種類・数は、輸送設備の構造・規模・従事者の数に見合ったものとする
- 輸送設備は、個々の動物が自然な姿勢で立ち上がる、横たわる、羽ばたくなどの日常的な動作を容易に行うための十分な広さ・空間があるものとする
- 輸送設備は、定期的な清掃・消毒の実施により、清潔に保つ
- 必要に応じて空調設備を備えるなどして、動物に適した温度・明るさ・換気・湿度などが確保されるようにする (ただし、動物の健康・安全を守るための特別な事情がある場合を除く)
- 動物の種類・数・発育状況・健康状況に応じて、エサの種類を選択し、適切な量・回数により給餌・給水を行う (ただし、動物の健康・安全を守るための特別な事情がある場合を除く)
- 動物の疲労・苦痛を軽減するために、輸送時間はできる限り短くするとともに、輸送中は、必要に応じて休息または運動のための時間を確保する
- 衛生管理、事故・脱走の防止、周辺の生活環境の保全に必要な対策をする
※他者に輸送を委託する場合も、この規定のとおりに行います。
- 遺伝性疾患などの問題を生じさせるおそれのある動物、幼齢の動物、高齢の動物などを繁殖に用いたり、遺伝性疾患などの問題を生じさせるおそれのある組合せで繁殖をさせないようにする※
- みだりに繁殖させることにより、母体に過度な負担がかかることを避ける
- 飼養施設の構造・規模や職員数などを踏まえて、適切な繁殖回数とし、必要に応じて繁殖を制限するための対策をとる
- 販売・貸出し・展示のために繁殖させる場合は、動物の繁殖の実施状況を台帳(繁殖実施状況記録台帳)に記録し、5年間保管する
※希少な動物の保護増殖を行う場合は、この規定から除きます。
第1種動物取扱業者における、犬猫のみに当てはまる管理方法について、事業内容ごとにご案内します。
- 飼養施設に輸送された犬猫は、輸送後2日以上、その状態(下痢、おう吐、四肢のまひなどの外形上明らかなもののみ)を目視によって観察する※1
- 夜間に犬猫を顧客とふれあわせ、または譲渡したり、引き渡すことがないようにする(ただし、特定成猫(※2)については、夜間のうち展示を行わない間に特定成猫を顧客とふれあわせ、または譲渡したり、引き渡すことがないようにする)
- 犬猫を取得したときは、その日から30日を経過するまで日までに、マイクロチップを装着し、情報の登録をする (ただし、すでに装着されていたり、犬猫の健康・安全上の支障が生じるおそれがあるときを除く)※3
※1 移動販売をする場合は、2日以上前に会場に輸送しないと販売はできないということになります。
※2 生後1年以上で、午後8時から午後10時までの間に展示されるときには休息設備に自由に移動できる状態で展示されている猫のことです。
※3 販売業者のみに当てはまる規定です。
- 高齢猫(11歳以上が目安)の展示を行う場合、定期的に健康診断を受けさせるなど、健康に配慮した取扱いに努める
- 展示は、午前8時から午後8時までの間に行う。ただし、特定成猫(※1)の展示を行う場合は、午前8時から午後10時までの間に行う※2
- 長時間連続して展示を行う場合は、犬猫が休息できる設備(※3)に自由に移動できる状態にする。そのようなことが困難な場合は、展示時間が6時間を超えるごとに、展示を行わない時間を設ける※4
- 夜間に犬猫を顧客とふれあわせないようにする (ただし、特定成猫については、夜間のうち展示を行わない間に特定成猫を顧客とふれあわせないようにする)
※1 生後1年以上で、午後8時から午後10時までの間に展示されるときには休息設備に自由に移動できる状態で展示されている猫のことです。
※2 1日の特定成猫の展示時間は、それぞれの特定成猫で、12時間を超えてはいけません。
※3 「休息できる設備」とは、顧客などとの接触・視線・照明・音響にさらされる状態を避けることができ、十分に休息できる場所などのことです。
※4 「展示を行わない時間」は、個々の状態や展示状況に応じてまちまちですが、通常のペットショップであれば、少なくても30分~1時間程度と考えられます。
また、犬猫がダンボールなどの簡易的なものに入ったとしても、展示を行わない時間にはなりません。
- 他の業者に犬猫を譲り渡す場合、繁殖実施状況記録台帳の写しもいっしょに譲り渡す
- 犬を繁殖させる場合、生涯出産回数は6回までとし、メスの交配時の年齢を6歳以下にする (ただし、7歳になったときに、生涯出産回数が6回未満であると証明できる(※)場合は、交配時の年齢は7歳以下とする)
- 猫を繁殖させる場合、メスの交配時の年齢を6歳以下にする (ただし、7歳になったときに、生涯出産回数が10回未満であると証明できる(※)場合は、交配時の年齢は7歳以下とする)
- 犬猫を繁殖させる場合、必要に応じて、獣医師による診療を受けさせ、また助言を受ける
- 犬猫を繁殖させる場合で、帝王切開をするときは、獣医師に行わせ、出生証明書と母体の状態・今後の繁殖の適否に関する診断書の交付を受け、5年間保管する
- 犬猫を繁殖させる場合、「共通事項2-4.の診断書」と上記4の獣医師からの帝王切開またはその他の診断結果により、繁殖に適さない犬猫を繁殖に用いないようにする
※本来、繫殖実施状況記録台帳によって生涯出産回数を証明できますが、生涯出産回数を記録していなければ、7歳でも交配が可能であるという規定は適用できません。
犬猫販売業者は、犬猫の販売前に獣医師に依頼して、マイクロチップを装着し、情報の登録、または登録された情報の変更をしなければいけません。
(情報の登録などはこちらのサイトから⇒リンク(犬と猫のマイクロチップ情報登録サイト))
なお、犬猫の健康・安全に支障があるときや、やむを得ないときを除いて、マイクロチップを取り外すことはできません。
また、犬猫販売業者以外の方が、犬猫にマイクロチップを装着することは努力義務ですが、装着した場合は、情報の登録は義務となります。
ブリーダーは、犬猫が生まれてから120日以内に、獣医師に依頼してマイクロチップの装着をします(上図の1と2)。
マイクロチップが装着された後、獣医師が発行した「マイクロチップ装着証明書」(上図の3)を付けて、30日以内に、情報の登録をします(上図の4)。
情報登録後、指定登録機関(2023年時点では、日本獣医師会だけです)から「登録証明書」が交付されます(上図の5)。
57日齢から犬猫を販売することができますが、そのときは、マイクロチップを装着してから30日経過していなくても、販売するときまでに情報を登録しておく必要があります。
犬猫を販売するときは、登録証明書を付けて販売します(上図の6)。
犬猫を購入したときは、30日以内に所有者の変更登録をします(上図の7)。
万が一、マイクロチップを装着しているが登録をされていない犬猫を取得したときは、その日から30日以内に登録をしなければいけません。
所有者の変更登録をした後、新しい登録証明書が交付されます(上図の8)。
犬猫を一般消費者に販売するときに、この登録証明書も一緒に渡します(上図の9)。
犬猫を販売するときは、まだ30日経過していなくても、販売するときまでに所有者の変更登録をしておく必要があります。
- 登録証明書を紛失してしまった場合、再交付を受けることができます。
- 住所や電話番号を変更したときは、30日以内に登録事項の変更をする必要があります。そのときには、新しい登録証明書が交付されます。
- 登録をした犬猫が死亡してしまったときは、30日以内に死亡の届出をする必要があります。
- このマイクロチップの登録の制度は、民間事業者が実施していた制度(AIPOなど)とは別のものであるので注意が必要です。
指定登録機関に支払う手数料は、下表のとおりです。
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手数料
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マイクロチップの情報の登録
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300円 / 件
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登録証明書の再交付
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200円 / 件
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変更の登録(所有者の変更)
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300円 / 件
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変更の登録(所有者は変わらず、住所・電話番号などの変更)
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なし
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死亡の届出
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なし
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基準省令に記載されているの動物管理方法のうち、第1種動物取扱業者の事業内容に応じて当てはまる項目(個別事項)について、動物全般に当てはまる項目と犬猫のみに当てはまる項目に分けてご案内しました。
また、個別事項の1つであるマイクロチップの情報登録についても、詳しくご案内しました。
基準省令には、個別事項だけではなく、第1種動物取扱業者のすべての業種に当てはまる動物管理方法(共通事項)もあり、こちらも遵守していくことが、第1種動物取扱業者の責務ですので、確認していきましょう。