特定動物の飼養・保管の許可について

人の生命・身体・財産に害を及ぼすおそれがある動物(特定動物)は、原則、飼養や保管ができません。

 

ただし、場合によっては許可を得て、飼養や保管をすることができます。

 

ここでは、特定動物の飼養・保管の許可についてご案内します。

 

1.特定動物の種類

特定動物は、動物愛護管理法施行令によって、以下の表のとおりに種が定められています。

なお、特定動物が交雑することによって生まれた動物(親のどちらかが特定動物)も含まれます。

哺乳類
アテリダエ科 ホエザル属全種、クモザル属全種、ウーリークモザル属全種、ウーリーモンキー属全種、ヘンディーウーリーモンキー
おながざる科 マンガベイ属全種、オナガザル属全種、クロロケブス属全種、コロブス属全種、パタスモンキー、ロフォケブス属全種、マカク属全種、マンドリル属全種、テングザル、ヒヒ属全種、マカコロブス属全種、リーフモンキー属全種、オリーブコロブス、ドゥクモンキー属全種、リノピテクス属全種、センテピテクス属全種、メンタウェーコバナテングザル、ゲラダヒヒ、トラキュピテクス属全種
てながざる科 全種
ひと科 ゴリラ属全種、チンパンジー属全種、オランウータン属全種
いぬ科 ヨコスジジャッカル、キンイロジャッカル、コヨーテ、オオカミのうちディンゴと犬以外、セグロジャッカル、アビシニアジャッカル、タテガミオオカミ、ドール、リオカン
くま科 全種
ハイエナ科 全種
ねこ科 チーター、カラカル、アジアゴールデンキャット、ジャングルキャット、オセロット、サーバル、オオヤマネコ属全種、ウンピョウ、ヒョウ属全種、スナドリネコ、アフリカゴールデンキャット、ピューマ属全種、ユキヒョウ
ぞう科 全種
さい科 全種
かば科 全種
きりん科 キリン
うし科 バイソン属全種、アフリカスイギュウ
鳥類
ひくいどり科 全種
コンドル科 カリフォルニアコンドル、トキイロコンドル、コンドル
たか科 クロハゲワシ、オナガイヌワシ、イヌワシ、ボネリークマタカ、ソウゲンワシ、モモジロクマタカ、コシジロイヌワシ、ヒゲワシ、コシジロハゲワシ、マダラハゲワシ、オジロワシ、ハクトウワシ、オオワシ、サンショクウミワシ、オウギワシ、パプアオウギワシ、ヒメオウギワシ、クマタカ、フィリピンワシ、ゴマバラワシ、カンムリクマタカ、ミミヒダハゲワシ
爬虫類
かみつきがめ科 全種
どくとかげ科 全種
おおとかげ科 コモドオオトカゲ、ハナブトオオトカゲ
にしきへび科 アメジストニシキヘビ、オーストラリアヤブニシキヘビ、インドニシキヘビ、アミメニシキヘビ、アフリカニシキヘビ
ボア科 ボアコンストリクター、オオアナコンダ
なみへび科 ブームスラング属全種、ヤマカガシ属全種、タキュメニス属全種、アフリカツルヘビ属全種
コブラ科 全種
くさりへび科 全種
アリゲーター科 全種
クロコダイル科 全種
ガビアル科 全種

 

上記に含まれる動物のうち、他の法律によって、飼養・保管が規制されているものは特定動物には含まれません。

2.特定動物の飼養・保管の禁止の例外

特定動物の飼養・保管は、原則禁止で、許可を得た場合のみ認められています。

 

ただし、動物愛護管理法施行規則によって例外が定められ、飼養・保管の際に許可が必要でない場合があります。

その例外は次のとおりです。

  • 動物病院で、獣医師が診療のためにする場合
  • 非常災害時の応急措置に伴う場合
  • 警察の責務の場合
  • 家畜防疫官が、動物検疫所の業務に伴う場合
  • 検疫所職員が、検疫所の業務に伴う場合
  • 税関職員が、税関の業務に伴う場合
  • 自治体の職員が、業務に伴う場合
  • 国や自治体の職員が、種の保存法や鳥獣保護管理法の業務に伴う場合
  • 国の職員が、遺失物法の業務に伴う場合
  • 特定動物の飼養・保管の許可を得た者が、別の都道府県で3日間以内、許可を受けた飼養施設で飼養・保管する場合(ただし、飼養・保管をする都道府県への届出は必要です。)
  • 特定動物の飼養・保管の許可を得た者が死亡(法人の場合は解散)したとき、相続人・破産管財人・清算人がその日から60日以内で飼養・保管する場合

3.許可の要件

特定動物の飼養・保管は、次の要件を満たしているときだけ認められます。

  1. 飼養・保管の目的が次のいずれかであること※
    • 動物園などの施設での展示
    • 試験研究、または生物学的製剤・食品・飲料の製造のため
    • 生業の維持
    • 特定動物の飼養・保管の許可を得た者が死亡して、死亡の日から60日を経過後の、相続人の飼養・保管
    • 上記以外に、公益上必要がある場合
  2. 飼養・保管が、基準に適合していること
  3. 申請者が次の欠格事由に該当していないこと
    1. 動物愛護管理法、またはその処分に違反して罰金以上の刑を科され、その執行が終わり、または執行を受けることがなくなった日から2年を経過していない者
    2. 特定動物の飼養・保管の許可を取り消され、その処分のあった日から2年を経過していない者
    3. 申請者が法人で、その役員が上記ア・イのいずれかに該当する者

※つまり、愛玩目的では飼育ができません。(令和2年6月1日より前から許可を得て飼育しているものを除く)

特定動物の飼養・保管の許可のイメージ(飼養・保管の目的が要件に適合し、飼養施設の構造・規模や飼養・保管の方法が基準に適合し、さらに申請者が欠格事由に該当しなければ許可される。)
特定動物の飼養・保管の許可のイメージ

4.特定動物の飼養・保管の基準

特定動物の飼養・保管が認められるためには、次の4-1・4-2・4-3の基準に適合していなければいけません。

4-1.飼養施設の構造・規模

飼養施設の構造・規模が次のとおりであること。

  • 脱走を防止できる構造・強度であること
  • 取扱者以外の者が、簡単にその特定動物に触れる可能性がない構造・規模であること(ただし、学習を目的として展示している場合で、見学者の安全性が確保されていると都道府県から認められた場合を除く)
  • 特定動物の種類ごとに次の飼養施設であること(ただし、学習を目的として展示している場合で、見学者の安全性が確保されていると都道府県から認められた場合を除く)
    • 哺乳類の場合:おり型施設など、よう壁式施設など、移動用施設のいずれか
    • 鳥類の場合:おり型施設など、よう壁式施設など(※)、移動用施設のいずれか  
    • 爬虫類の場合:おり型施設など、よう壁式施設など、移動用施設、水槽型施設などのいずれか

※よう壁式施設などは、ダチョウ目に限定

4-2.飼養・保管の方法

飼養・保管の方法が次のとおりであること。

  • 飼養施設の点検を定期的(1週間に1回以上)に行うこと※1※2
  • 水槽型施設などの設置では、施設の開口部が閉じた状態でも、外部から特定動物の状態を確認できる位置に設置する
  • 飼養施設の外で飼養・保管をしない(例外あり)
  • 第三者が容易に特定動物に接触しないような対策をとり、特定動物は人の生命・身体・財産に害を加えるおそれがあるので接触を禁止する旨の標識を施設やその周辺に設置すること(ただし、学習を目的として展示している場合で、見学者の安全性が確保されていると都道府県から認められた場合を除く)
  • みだりに繁殖させることで飼養・保管に支障がある場合、繁殖を制限するために、雌雄を分けた管理や、生殖を不能にする手術などの対策をする 
  • 特定動物の種類ごとに次のとおりにして、個体識別措置を明らかにする
    • 哺乳類の場合:特定動物の種類ごとに決められた部位に、ISOに適合するマイクロチップを埋め込み、獣医師が発行した証明書を添付して、飼養・保管の開始から30日以内に都道府県に届出をする(例外規定あり)
    • 鳥類の場合:哺乳類の場合と同様にするか、または脚部に識別番号を付けた脚環を装着し、証明書と装着状況の写真を添付して、飼養・保管の開始から30日以内に都道府県に届出をする(例外規定あり)
    • 爬虫類の場合:哺乳類の場合と同様にする(例外規定あり)
  • 特定動物の数が増加または減少した場合、その数の増減があった日から30日以内に個体識別措置とともに都道府県に届出をする(例外あり)

上記に違反した場合、都道府県知事から改善命令をされることがあります。

 

※1 屋外に設置されたよう壁式施設などにおいては、雪や風雨による飛来物などの堆積によって特定動物の脱走を容易にする事態が生じていないか、1日1回以上点検を行う。

 

※2 飼養施設の点検によって、異常が認められたときは速やかに補修などの対策をする。

4-3.飼養・保管が困難になった場合の措置

飼養・保管が困難になった場合の措置が、次のいずれかに該当すること。

  1. 譲渡先の確保や、譲渡先を探すための体制の確保
  2. 殺処分(上記1が困難な場合で、自らの責任で行う場合に限る)

5.許可の申請

次の書類を都道府県に提出して申請をします。

許可の有効期間は5年間です。

  1. 申請書※
  2. 飼養施設の図面・写真・付近の見取り図
  3. 申請者が欠格事由に該当しないことの説明書
  4. 個体識別措置において、特定動物にマイクロチップを装着した場合は、獣医師などが発行した識別番号の証明書
  5. 個体識別措置において、特定動物に脚環を装着した場合は、識別番号の証明書と装着状況の写真
  6. 管理責任者以外に飼養・保管をする者がいる場合は、管理体制を記載した書類
  7. 飼養施設の保守点検の計画書
  8. その他

※申請書には、次の事項を記載することになっています。

  1. 氏名・住所(法人の場合は、名称・住所・代表者の氏名)
  2. 特定動物の種類・数
  3. 飼養・保管の目的
  4. 飼養施設の所在地
  5. 飼養施設の構造・規模
  6. 飼養・保管の方法
  7. 飼養・保管が困難になった場合の措置
  8. 既に特定動物の飼養・保管を行っている場合、その特定動物の数・個体識別措置
  9. 法人の場合は、役員の氏名・住所
  10. 管理責任者

6.その他の手続き

6-1.変更の許可の申請

申請書への記載内容b~gのいずれかを変更しようとするときは、許可が必要です。

この場合も許可の要件を満たしていなければいけません。

6-2.軽微な変更の届出

次の事項が変更になったときは、その変更の日から30日以内に届出が必要です。

  • 申請者の氏名・住所(法人の場合は、名称・住所・代表者の氏名)
  • 飼養・保管が困難になった場合の措置の変更で、「殺処分」から「譲渡先の確保や、譲渡先を探すための体制の確保」になったとき
  • 法人の場合は、役員の氏名・住所
  • 管理責任者

6-3.許可証の再交付

許可証をなくしたり破損したり、軽微な変更の届出をしたときは、申請をして、許可証の再交付を求めることができます。

(許可証をなくしたり破損したら、すぐに都道府県に届出をしましょう。)

6-4.許可証の返納

次の場合は、60日以内に許可証の返納が必要です。(死亡のときは、死亡したことを知った日から60日以内)

  • 許可を取り消されたとき
  • 許可を受けた者が死亡(法人の場合は、合併・分割・解散)したとき
  • 許可証の再交付を受けた場合で、なくした許可証を発見したとき

6-5.飼養・保管の廃止の届出

有効期間満了前に飼養・保管をやめた場合は、その旨を届け出ることができます。

この場合は、許可証を付けて届出をします。

7.許可の取消し

次のいずれかに該当する場合は、許可を取り消されてしまいます。

  • 不正な方法で許可を受けたとき
  • 飼養・保管の目的が、要件に適合しなくなったとき
  • 飼養施設の構造・規模、飼養・保管の方法が、基準に適合しなくなったとき
  • 欠格事由に該当することとなったとき
  • 動物愛護管理法、動物愛護管理法の命令・処分に違反したとき

8.まとめ

特定動物を新たに飼育するためには許可が必要ですが、非常に限定した場合しか認められておらず、令和2年6月からは愛玩目的の飼育はできないようになりました。

 

特定動物を飼育する必要がある場合は、ここでご案内したことをぜひ参考としてください。

 

第1種動物取扱業者や第2種動物取扱業者として特定動物を飼養・保管するのであれば、これらの業者として守らなければならない基準もあります。

そして、第1種動物取扱業をはじめるためには登録が、第2種動物取扱業をはじめるためには届出も必要であるため、それらも確認をしておくと良いです。

(第1種動物取扱業についてはこちらから⇒リンク(第1種動物取扱業に登録するための5つの基準)

(第2種動物取扱業についてはこちらから⇒リンク(第2種動物取扱業の届出の基準と責務)

 

なお、特定動物の飼育の許可のご相談も承っておりますので、遠慮なさらずお問い合わせください。