ペットフードの一括表示以外の表示や広告

2024年7月2日

ペットフード事業者にとって適切な表示・広告を行うことは、消費者に誤解を与えず、自社の商品の価値を伝えるために非常に重要です。

表示の義務がある一括表示以外にも、様々な表示・広告に関する規制が存在します。

 

ここでは、消費者に誤解を与えることなく、消費者が自ら適切な選択ができるように、一括表示以外の適正な表示・広告についてご案内します。

 

目次

1.ペットフードの医薬品的な表示

ペットフードの容器・包装・添付文書・チラシ・パンフレット・刊行物・ネットにおいて、そのペットフードの目的が疾病の治療・予防や動物の身体の構造・機能に影響を及ぼすという旨の表示があるとき、ペットフードに医薬品的な効能効果があると標ぼうまたは暗示していると判断されてしまいます。

医薬品的な効能効果の標ぼうなどは、医薬品の承認を取得しなければしてはいけません。

 

薬機法(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確報等に関する法律)に基づいて、医薬品の承認もないのに、医薬品的な効能効果を標ぼうなどしたときは、罰則があります。

 

くれぐれもそのような表示をしないように注意しましょう。

1-1.疾病の治療に使用されることが目的と判断される表示例

次のような表示をしていると、医薬品的な効能効果の標ぼうなどと判断されます。

  • ○○病の治療に。○○病の改善に。○○病に。
  • ビタミン〇欠乏によって起こる目や呼吸器系の炎症に最も効果的です。
  • 症状に応じて、使用してください。
  • 関節疾患に苦しむ動物のために○○。

1-2.疾病の予防に使用されることが目的と判断される表示例

次のような表示をしていると、医薬品的な効能効果の標ぼうなどと判断されます。

  • ○○病の予防に。○○病対策に。
  • 病気・老化予防に。
  • 膀胱結石、腎臓結石の予防に最適です。
  • ○○は、泌尿感染の予防をし、排尿促進効果がありますので、尿路結石の予防になります。

1-3.身体の構造に影響を及ぼすことが目的と判断される表示例

次のような表示をしていると、医薬品的な効能効果の標ぼうなどと判断されます。

  • ○○の成分は、最新の医療研究の成果として開発され製薬段階にまで達したものであります。関節を保護・強化するために最も効果を発揮します。

1-4.身体の機能に影響を及ぼすことが目的と判断される表示例

次のような表示をしていると、医薬品的な効能効果の標ぼうなどと判断されます。

  • ストレスを減らし、免疫性と、有用なホルモンの増加をもたらします。
  • ○○は、新陳代謝を最大限に復活させる突破口ともなります。○○は、寿命を延ばすだけではなく、ベターライフを約束するものです。
  • 感染に関連するものや免疫力の促進に使用します。
  • 動物の食欲増進剤。
  • エサに振り掛けるか、そのまま食べさせるだけで、体臭、口臭を防止します。
  • 免疫強化・抗アレルギー。
  • 健康に有害な食べ物などを食べてしまった動物のための解毒作用もあります。
  • ペット独特の体臭が和らぎます。
  • ノミ、ダニなども近寄らなくなります。
  • 老化防止のために研究開発した、本格的な専門健康食品です。
  • 肝臓粉末を用いて強肝作用を高めます。
  • 免疫力強化。
  • 用途:肝臓病 肝臓の再生や機能の回復を助け、代謝異常を改善し、毒素の蓄積を減らします。
  • ダイエット:アミノ酸・ミネラルの複合体が、脂肪分と結合し、体内から剥離。余分な脂肪分を体外に排出させます。
  • 肝細胞内の銅蓄積や胆汁うっ滞による細胞内損傷を低減させるため○○を増強。
  • 老化や病気の原因となる体内での○○の発生を抑えます。
ペットフードは医薬品的な効能効果はダメ
ペットフードは医薬品的な効能効果はダメ

1-5.医薬品であることを暗示させる表示例

次のような表示をしていると、医薬品的な効能効果の標ぼうなどと判断されます。

  • ○○の漢方薬剤をベースに開発されました。
  • 動物医療用

1-6.新聞・雑誌などの記事、獣医師・学者などの談話・学説、経験談などを引用や掲載することにより医薬品であること暗示させる表示例

次のような表示をしていると、医薬品的な効能効果の標ぼうなどと判断されます。

  • 飼育者の経験談「○○を与えたところ、体調も良くなり今も元気です。」

1-7.「栄養補給」の表現

特定部位の改善・増強などを標ぼうしないで、特定部位への栄養補給を標ぼうすることは、直ちに医薬品的な表現とは判断されません。

 

直ちに医薬品的な表現とは判断されない例

  • ○○(特定部位)への○〇(成分名)の補給
  • ○○(成分名)を補給することによる○○(特定部位)の健康維持
  • 目の健康のために○○(成分名)を配合
  • 肥満で負担がかかる関節の健康維持のために○○(成分名)を配合
  • 健康な皮膚と輝く毛並みを維持します。

医薬品的な表現と判断される例

  • 健康な皮膚と輝く毛並みを約束します。(理由:改善・増進を暗示)

 

なお、栄養成分について、動物の構造・機能に対する具体的な作用を標ぼうすることは、医薬品的な効能効果と判断されます。

ただし、以下の例のように、栄養成分が生体の構成成分であることを示す表現や当該成分自体の化学的な性質などを示す表現は、直ちに医薬品的な表現とは判断されません。

 

直ちに医薬品的な表現とは判断されない例

  • 骨を構成する成分であるカルシウムを強化
  • ○○(成分名)が関節軟骨の前駆物質を供給

医薬品的な表現と判断される例

  • ビタミン〇は、生殖腺の機能維持を助けます。(理由:特定臓器の機能への影響を標ぼう)

1-8.「食事療法(または食餌療法)」に関する表現

療法食(栄養成分の量や比率が調節され、特定の疾病や健康状態にあるペットの栄養学的サポートを目的に、獣医師の指導のもとで食事管理に使用されることを念頭に置いたもの)については、栄養成分の量や比率などがどのように調節されているのかを具体的に明らかにして、疾病名や動物の身体の構造・機能について表示することは、直ちに医薬品的な表現とは判断されません。

 

ただし、疾病名や動物の身体の機能を商品名に使用することは、疾病の治療・予防や動物の身体の機能に影響を及ぼすことを暗示するため、適切ではありません。

 

直ちに医薬品的な表現とは判断されない例

  • 食事療法が必要な○○(疾病名)の動物に給与することを目的として○○(成分名)と○○(成分名)の含有量を調整した犬用のフードです。
  • この商品は○○病の犬・猫に給与することを目的として特別に○○(成分名)の含有量を調整された食事療法食です。
  • リン含有量を制限することで○○症を栄養学的に管理するための特別療法食です。
  • ○○不全を悪化させる○○症を考慮して、リン含有量を制限した療法食です。
  • 本商品はマグネシウム含有量を制限した○○症の猫用の療法食です。
  • 本商品は尿のpHを酸性側に傾けるように○○(成分名)の含有量を調節した食事療法食です。

医薬品的な表現と判断される例

  • リン含有量を制限することで、○○疾患の進行の遅延をサポートします。(理由:疾病の予防・治療を標ぼう)
  • バランスのとれた栄養で赤血球の生成をサポート(理由:身体の機能に対する具体的作用を標ぼう)
  • 本商品はマグネシウム含有量を制限することにより○○結石症の症状を軽減します。(理由:疾病の治療を標ぼう)

1-9.糞や尿の臭いに関する表現

口臭・体臭の防止は、医薬品的な表現と判断されます。

 

ただし、糞臭の防止については、着香や臭いの吸着などのように、エサや腸内容物への作用によるものであり、含有されている成分の薬理作用によるものでない場合の表現は、直ちに医薬品的な表現とは判断されません。

 

直ちに医薬品的な表現とは判断されない例

  • 配合されている○○(成分名)が糞の臭いを軽減します。

 

尿臭の防止については、糞臭と同様に、尿の元となる水分などの腸管内容物に直接作用し、臭いの吸着・分解などがされた結果、尿中に取り込まれるにおい物質が減少する場合の表現は、直ちに医薬品的な表現とは判断されません。

 

直ちに医薬品的な表現とは判断されない例

  • ○○(成分名)が、腸管内の水分や腸内容物の臭いを吸着することにより尿臭が軽減されます。

1-10.「免疫」などの表現

「免疫」「抵抗力」「体力」という表現は、それらを増強することを標ぼうした場合、医薬品的な表現と判断されます。

 

ただし、本来備わっている「免疫」「抵抗力」「体力」を維持するという表現は、直ちに医薬品的な表現とは判断されません。

 

直ちに医薬品的な表現とは判断されない例

  • 健康を維持することにより動物が本来持っている免疫力を保ちます。
  • バランスのとれた栄養成分により体力を維持。

医薬品的な表現と判断される例

  • 抵抗力をつける。(理由:改善・増進を暗示)
  • 免疫力を高める。(理由:改善・増進を標ぼう)

1-11.「毛玉」に関する表現

「毛玉除去」は、医薬品的な表現と判断されます。

 

ただし、食物繊維が豊富に含まれることにより、物理的に毛玉の形成を抑えたり除去することは、直ちに医薬品的な表現とは判断されません。

 

直ちに医薬品的な表現とは判断されない例

  • 本製品は食物繊維が豊富なため、毛玉の形成を抑えます。

1-12.歯垢・歯石に関する表現

商品の物理的な特性として、口腔内で消化されやすい旨や、噛むことが促進される旨を明記して、歯垢・歯石の沈着を抑える、または歯垢が付きにくくなることを標ぼうすることが可能です。

 

直ちに医薬品的な表現とは判断されない例

  • かめばかむほど配合の植物パルプが歯垢ポケットにブラッシング効果をもたらし、愛犬の歯垢の蓄積を抑える手助けをします。

医薬品的な表現と判断される例

  • 歯周病の予防のために独特な形状をしています。(理由:直接的に歯周病の予防を標ぼう)

 

なお、口臭の防止は医薬品的な表現と判断されますが、噛むことにより物理的に歯垢や歯石が沈着しにくくなることにより口臭を軽減するという表現であれば、直ちに医薬品的な表現とは判断されません。

 

直ちに医薬品的な表現とは判断されない例

  • 噛むことで歯垢の沈着を抑えることにより口臭を軽減します。

1-13.アレルギーに関する表現

アレルゲン物質を含まないことで、アレルギーを持った動物に与えることができる場合は、含まない物質を明記して、「アレルギー配慮」「アレルギーに悩む動物のために」という表現をすることは、直ちに医薬品的な表現とは判断されません。

 

直ちに医薬品的な表現とは判断されない例

  • 牛肉アレルギーに悩む愛犬に配慮して、○○(商品名)は、牛肉を使用しておりません。

1-14.「サポート」という表現

「サポート」という表現は、健康維持の範囲で使用されるのであれば、医薬品的な表現とは判断されません。

 

ただし、疾病名や身体の機能を直接的に「サポート」するという表現は、身体や機能の改善・増強を暗示していることから、医薬品的な表現と判断されます。

 

直ちに医薬品的な表現とは判断されない例

  • 関節の健康をサポート
  • 健康を維持することにより免疫力の維持をサポート

医薬品的な表現と判断される例

  • 心臓病にサポート
  • 免疫力をサポート

1-15.その他の表現

直ちに医薬品的な表現とは判断されない例

  • 腸内細菌を最適化するために栄養学的に○○糖を配合

医薬品的な表現と判断される例

  • 抗酸化栄養素がフリーラジカルを減らして免疫反応をサポート(理由:栄養成分の身体の機能に対する具体的作用を標ぼう)
  • 腸粘膜を保護するため○○糖を配合(理由:疾病の予防を暗示)

2.動物用医薬品と判断されないための表示の注意点

上記「1.ペットフードの医薬品的な表示」でご案内した内容に加え、次に該当すると医薬品と判断されてしまうので、注意してください。

 

  1. ペットフードの成分が医薬品的成分である。

    ただし、次の場合を除く。

    • 薬理作用を期待できない量で、着色・着香、防腐、保存などのために製造加工工程で使用され、その成分が含有することを標ぼうしていないときや標ぼうしても使用目的を併記するとき
    • 成分がビタミン、ミネラル類、アミノ酸であるとき
    • 飼料添加物の成分であるとき

     

  2. ペットフードの形状が医薬品的形状(錠剤、丸剤、カプセル剤、アンプル剤など)である。

    ただし、「ペットフード」などと明記されている場合は除く。(それでもアンプル形状は除かれません。)

     

  3. ペットフードの用法用量が医薬品的である。(食前、食間、投与、服用などの表記)

3.景表法による表示 ー公正競争規約よりー

ここでは、公正競争規約に基づく表示についてご案内しますが、公正競争規約はペットフード公正取引協議会の会員社だけが守れば良いものではありますが、消費者は公正競争規約に基づいた表示を日常的に目にしており、信頼できる表示の仕方と思っています。

 

会員社でなくても、公正競争規約に沿った表示をするように心掛けましょう。

3-1.特定の原料に関する表示

「ビーフ」「チキン」「まぐろ」などの特定の原材料を、内容量の5%以上使用している場合のみ、ペットフードの名称・絵・写真・説明文などに当該原材料の使用の旨を表示できます。

3-2.特定の用語の使用

特定の栄養成分の含有量の有無や多い少ない(「高」「豊富」「含む」「強化」「ゼロ」「低」「減」など)は、次のいずれかに該当するときに使用できます。

  • 同種の商品と比較してどのくらいの差があるか、数値で具体的に記載する場合
  • 客観的な数値基準でその根拠を説明でき、その根拠を記載する場合

 

「推奨」などの用語は、次のいずれかに該当し、その根拠を記載するときにのみ使用できます。

  • 一般的または関連分野の多数の専門家に認められた方法による試験・調査で得られた結果
  • 専門家・専門家団体・専門機関の見解や学術文献で、一般に認められているもの

 

「受賞」などの用語は、それを受けた時期・受賞者の氏名または名称を記載することで使用できます。

 

「無添加」「不使用」などの用語は、無添加である原材料名がはっきりと併記され、当該原材料について次のいずれかに該当するときにのみ使用できます。

  • 添加物以外の原材料の表示については、すべての製造工程において当該原材料が使用されていないことが確認できる。
  • 添加物の表示については、ペットフードの表示のための添加物便覧に記載された添加物を一切していないことが確認できる。(加工助剤、キャリーオーバー、栄養強化目的を除く)

 

「ナチュラル」「ネイチャー」などの用語は、化学的合成物や着色料を使用していないときにのみ使用できます。 ただし、総合栄養食・療法食・間食(総合栄養食基準を満たすもの)については、栄養バランス上欠かせないビタミン類・ミネラル類・アミノ酸類のみに化学的合成物を使用し、その他条件を満たしていれば、使用できます。

3-3.不当表示の禁止

次の表示は禁止されています。

  • 客観的根拠に基づかない、特選・特級などの表示

     

  • 他の事業者・商品を誹謗・中傷する表示

     

  • 原産国について誤認されるおそれのある表示

     

  • 成分・原材料・製造方法について、実際のものや競争関係にある事業者のものよりも著しく優良であると誤認されるおそれのある表示(以下のことが含まれます)

    • ペットフードには通常含まれない原材料や添加物などについての不使用・無添加である旨を強調すること
    • 客観的根拠に基づかない「天然」「自然」など

     

  • 賞を受けた事実や推奨を受けた事実がないにもかかわらず、そのように誤認されるおそれのある表示

     

  • 内容物の保護、品質保全、製造技術上必要な限度を超えて著しく過大な容器包装を用いること

     

  • そのほか、商品内容や取引条件について、実際のものや競争関係にある事業者のものよりも著しく優良・有利であると一般消費者に誤認されるおそれのある表示(以下のことが含まれます)
    • AAFCOの検査に合格したかのような表示(※AAFCOは認証機関ではありません。)
    • 「完全栄養食」「総合完全栄養食」など
    • 製品全体を指した「新鮮」「フレッシュ」「生」など

4.まとめ

ペットフードの一括表示以外の表示・広告について、薬機法や公正競争規約に基づく表示をご案内しました。

 

これらのご案内を参考に、誤解のない、消費者に正確な情報を伝える表示を心掛けて、皆さんの商品の価値を正しくアピールしていきましょう。

 

なお、今回ご案内してきた内容はあくまでも参考情報であり、以下の資料を皆様ご自身で確認してください。

ペットフード等における医薬品的な表示について

動物用医薬品等の範囲に関する基準について

ペットフードの表示に関する公正競争規約

 

ペットフードに関するお手続きのご相談も承っておりますので、遠慮なさらずお問い合わせください。