動物の飼養・収容の許可(化製場法に基づく許可)

2024年8月1日

都道府県が指定する区域において、ある特定の動物を、決められた数以上、施設で飼養・収容するときは、許可が必要です。

これは、市街地や住宅地などでの動物の飼育によって、蚊やハエが集まってきたり、悪臭がしたりという、環境衛生上の問題を防止し、住民の生活環境を守っていくための規制です。

 

ここでは、動物の飼養・収容の許可についてご案内します。

 

1.はじめに

動物の飼養・収容の許可は、「化製場等に関する法律(略称:化製場法)」で定められていますが、許可のための主な基準は都道府県の条例に委ねられています。

ただし、都道府県から市町村に、事務の権限が移されていることがあるため、市町村によって基準が異なる可能性がありますが、おおむね違いはないと思われます。

 

ここでは、埼玉県と東京都の条例の内容をもとにご案内していますので、詳しく気になる方は、市町村にお問い合わせてください。

 

※化製場法は、環境衛生上の問題を防止し、住民の生活環境を守っていくために、動物の死体の処理施設に関わる法律ですが、動物の飼養・収容の施設についても定めています。

2.許可対象

動物の飼養・収容の許可が必要なのは、以下の2つを両方とも満たすときです。

  • 動物を飼養・収容する施設が、指定区域内にあること
  • 飼養・収容する動物が、規定の動物と数以上であること

上記2つの項目を以下で詳しくご案内します。

2‐1.指定区域

指定区域の基準は以下のとおりです。

  • 人口密度が1k㎡あたりおおむね3000人以上である町、字
  • 市街的形態の区域内の戸数が全戸数のおおむね5割以上である町・字
  • 観光地などであるため、特に清潔を保持することが必要な町・字

簡単に考えると、市街地・住宅地と観光地は、きれいな環境にしておく必要があるため、このような基準となっていると思われます。

 

具体的な指定区域は、それぞれの自治体(保健所など)でお調べください。

 

2‐2.施設で飼養・収容するための許可が必要な動物

以下の表に記載のある動物を、表に記載のある数以上飼養・収容するときは、許可が必要です。

 

動物の種類
1頭
1頭
1頭
めん羊 4頭
やぎ 4頭
10頭

鶏(30日未満のひなを除く)

100羽
あひる(30日未満のひなを除く) 50羽

3.施設の構造設備の基準

許可の申請をする際には、動物を飼養・収容する施設(畜舎・家きん舎)が以下の基準を満たすように計画する必要があります。

 

3‐1.畜舎の構造設備基準

畜舎は、牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬を飼育・収容する施設で、基準は以下のとおりです。

  1. 床は不浸透性材料で造られ、適当な勾配と排水溝があること。
  2. 内壁は、動物の種類に応じて、適当な高さまで清掃に支障がない素材で造られ、清掃に支障がない構造であること。
  3. 畜舎内部は、清掃に支障がない適当な広さと高さがあること。
  4. 床の周辺の地面で、汚物・汚水が飛散するおそれがある箇所は、不浸透性材料で覆われ、適当な勾配と排水溝があること。
  5. 洗浄用水を十分に供給できる給水設備があること。
  6. 汚物保管設備と汚水貯水槽があること。ただし、汚水浄化装置がある場合や汚水を下水道に直接流せる場合には、汚水貯水槽は必要ではありません。
  7. 汚物保管設備と汚水貯留槽は、不浸透性材料で造られ、密閉できる覆いがあること。
  8. 畜舎から汚水貯留槽、汚水浄化装置や下水道に通じる排水溝があること。
  9. 排水溝は、不浸透性材料で造られ、適当な覆いがあること。
  10. 魚介類の臓器、食物の残りなどを調理してエサとする畜舎で、調理の際に著しい臭気がするものは、次の要件を満たすエサの取扱室があること。
    • 床は不浸透性材料で造られ、適当な勾配と排水溝があること。
    • 脱臭装置があるか、または臭気が外部に漏れにくい構造であること。
    • 洗浄用水を十分に供給できる給水設備があること。
    • 密閉することができ、エサの取扱量に応じた、適当な容量の容器があること

3‐2.家きん舎の構造設備基準

家きん舎は、鶏、あひるを飼養・収容する施設で、基準は以下のとおりです。

  1. 内部は、清掃に支障がない適当な広さと高さがあること。
  2. 鶏の家きん舎の床は、砂浴場を除いて、清掃に支障がない素材で造られ、採糞に便利な構造であること。
  3. あひるの家きん舎の床は、不浸透性材料(バタリー式の家きん舎では、不浸透性材料または板)で造られ、適当な勾配と排水溝があること。
  4. あひるの家きん舎には、洗浄用水を十分に供給できる給水設備があること。
  5. 鶏の家きん舎では汚物だめを、あひるの家きん舎では汚物保管設備と汚水貯留槽があること。ただし、汚水浄化装置がある場合や汚水を下水道に直接流せる場合には、汚水貯水槽は必要ではありません。
  6. 汚物保管設備と汚水貯留槽は、不浸透性材料で造られ、密閉できる覆いがること。
  7. 家きん舎から汚水貯留槽、汚水浄化装置や下水道に通じる排水溝があること。
  8. 排水溝は、不浸透性材料で造られ、適当な覆いがあること。
  9. 魚介類の臓器、食物の残りなどを調理してエサとする畜舎で、調理の際に著しい臭気がするものは、次の要件を満たすエサの取扱室があること。
    • 床は不浸透性材料で造られ、適当な勾配と排水溝があること。
    • 脱臭装置があるか、または臭気が外部に漏れにくい構造であること。
    • 洗浄用水を十分に供給できる給水設備があること。
    • 密閉することができ、エサの取扱量に応じた、適当な容量の容器があること

4.必要な手続き

次の書類を準備して、役所担当部署(保健所や生活環境に関する部署)の窓口で申請をしますが、申請の際には手数料(1件あたり6000円~8000円)の支払いが必要です。

  • 申請書
  • 施設の概要書
  • 施設の平面図
  • 案内図
  • (法人の場合は)登記事項証明書

手数料の額、必要書類の詳細は、施設を設置する予定の市町村にお問い合わせください。

5.注意事項

施設の管理者は、以下のとおりにしなければいけません。

  1. 施設の内外は常に清潔にし、汚物処理を十分にすること。
  2. 虫の発生の防止・駆除を十分にすること。
  3. 臭気の処理を十分にすること。
  4. 作業に使用した器具・容器・機械設備は、十分に洗浄し、常に清潔にしておくこと。
  5. 動物由来感染症にかかった、またはその疑いのある動物を取扱うとき、必要な消毒薬品・消毒器具を備えておくとともに、畜舎・家きん舎の内外を十分に消毒すること

※上記4と5は、東京都の規定です。

 

施設が構造設備基準に適合しなくなったり、管理者が上記の1から5まで(埼玉県は3まで)をしていないときは、都道府県から必要な対策をとるように命令がありますので、注意が必要です。

命令に違反したときは、許可の取消しや施設の使用禁止命令など下されることがあり得ます。

 

犬のブリーダーさんが犬を10頭以上飼育していたが、近所から臭いについてクレームが多数あり、役所からも改善するように命令があったにもかかわらず何も対策をしていないときには、動物の飼養・収容の許可が取り消される可能性があります。

6.罰則

無許可で、施設に規定数以上の動物を飼養・収容した場合は、罰則があります。

罰則:1年以下の懲役、3万円以下の罰金

 

保護犬活動をしているボランティアさんが、動物の飼養・収容の許可が必要なことを知らずに、犬を10頭以上飼育していた場合、罰則が適用される可能性があります。

 

7.その他

次のことにも注意してください。

  • 動物愛護管理法の動物取扱業者で、飼養設備がある場合、動物愛護管理法による登録だけではなく、化製場法の許可も必要な場合があります。
  • 個人で動物を飼育すること自体には許可は必要ありませんが、規定数以上の動物を飼育している場合は、化製場法の許可が必要になります。

8.まとめ

ここまで、動物の飼養・収容の許可についてご案内しました。

 

動物の飼養・収容は、単なる趣味やビジネスではなく、時として地域社会との関りが深い行為となります。

化製場法の規制を守って、責任をもって動物と向き合いましょう。

 

本ページを参考として、申請の作業を進めていっていただけると幸いです。